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2016年12月のエントリー一覧

  • 【本の情報】 おじさん仏教 [著]小池龍之介

    ■晩年の死生観 子どものころ、大人は立派だと思っていた。自信たっぷりで、怖いものなさそうで。ところが自分が中高年になってみてわかった。ほんとうの中高年は、不安と後悔と嫉妬と怒りでいっぱいなのだ。 小池龍之介『おじさん仏教』は、若い僧侶が悩める中高年男性に助言する本である。第一部で「おじさん」の具体的な悩みに答え、第二部で仏教理論と悩みの関係を解説する。第三部には蛭子能収との対談を収録。 第一部のお...

  • 【本の情報】 ゼロからわかるキリスト教 佐藤優さん

    ■「神」を論じる不可能に挑む 主題は「神とは何か」という大きな問いだ。過激派組織「イスラム国」などによるテロが相次ぎ、資本主義を中心とする近代システムが限界をみせる「危機の時代」。だからこそ言語化が難しい神の領域を言語化しようとする「不可能の可能性」に挑む意味があるというのだ。 「神学は面白い学問で、諸学のパラダイム転換を先取りするんです」 題材にしたのは「民衆のアヘンである」と宗教を批判したマル...

  • 【本の情報】 老いる家 崩れる街―住宅過剰社会の末路 [著]野澤千絵

    <h1>老いる家 崩れる街―住宅過剰社会の末路 [著]野澤千絵</h1>[文]梶山寿子(ジャーナリスト)  [掲載]2016年12月18日■高度成長期の政策、転換が急務 人口も世帯数も減っていくことが確実なのに、空き家の急増を見て見ぬふりで新築住宅が次々に建てられる。我々はそんな「住宅過剰社会」に生きているという。都市にはタワーマンションが林立し、郊外では農地を虫食うように住宅地が拡大する。無策のままだと、お...

  • 【本の情報】 ごはんの時間―井上ひさしがいた風景 [著]井上都

     食事を通して、自らとふれあった人たちの思い出を綴(つづ)る。父井上ひさし、母、そして夫や肉親、知己の表情や生の瞬間が巧みな筆調で描きだされる。 怒る井上ひさしがいる。たとえば「クラブハウスサンドイッチ」では、「父と暮(くら)せば」執筆の折、被爆者の声を懸念する著者に、父は「原爆は人類共通の体験なんだ」と顔色を変える。 「茄子(なす)の味噌(みそ)炒め」では幼年期の記憶が語られ、「こんなもの食える...

  • 【本の情報】 らぶれたあ―オレと中島らもの6945日 [著]鮫肌文殊

     2004年に急逝した中島らもとの、冗談と狂騒の日々をドキュメントふうに綴る。著者は「進め!電波少年」などで知られる放送作家だ。 1985年、中島が司会のテレビ番組にブレーンとして呼ばれ、打ち合わせも早々に「キミ、飲まれへんのかいな」と言われる。その夜、下戸なのに泥酔し、泊まったのは「ヘルハウス」の別名をもつ中島家だった……。大竹まことらが出演する番組内での伝説のコントや、中島が旗揚げした劇団の稽古...

  • 【本の情報】 LIFE SHIFT(ライフ・シフト) [著]リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット [著]池村千秋

    <h1>LIFE SHIFT(ライフ・シフト) [著]リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット [著]池村千秋</h1>[文]瀧本哲史(京都大学客員准教授)  [掲載]2016年12月11日■「人生100年」のモデル示す 年末になると今年を振り返る企画が増える。2016年のキーワードは「生き方、働き方の再構築」かもしれない。働き方改革、副業の推奨、過労自殺、トランプ大統領誕生の背景にある中産階級の没落、A...

  • 【本の情報】 結んで放して [作]山名沢湖

    <h1>結んで放して [作]山名沢湖</h1>[文]南信長(マンガ解説者)  [掲載]2016年12月11日■描くことに魅せられた同志たち あくまでも推計にすぎないが、現役のプロ漫画家は約1千人、同人誌やウェブで作品を発表するアマチュア作家は数十万人とも言われる。それだけ多くの「マンガを描く人」がいるなかで、「描き続けること」の難しさと尊さを痛感させるのが本作だ。 4編からなるオムニバス形式のストーリー。同...

  • 【本の情報】 紙の城 [著]本城雅人

    ■新聞の力と可能性 10年後、新聞はどうなっているだろう。今のままか、違う形態になっているか、それとも消滅しているか。 本城雅人の長編小説『紙の城』は、IT企業による新聞社買収を描く。200万部の全国紙を発行する東洋新聞が、新興のIT企業に買収されようとしている。社会部デスクの安芸稔彦は、同僚たちと買収阻止に向けて動く。タイムリミットは2週間。はたして買収を止められるのか……。 本作はエンターテイン...

  • 【本の情報】 21世紀の豊かさ [編著]中野佳裕、ジャン=ルイ・ラヴィルほか

     20世紀の社会民主主義は、「民主主義と資本主義の洗練化に貢献し、市場と国家の連携を通じて経済的かつ社会的な進歩の理想を普及するまでに至った」。しかし、経済のグローバル化に伴い、ヨーロッパでも、社会民主主義は新自由主義に駆逐されつつある。 本書では、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アメリカ、日本の研究者たちが、「脱成長」の時代における社会民主主義の再活性化を模索する。エコロジーの視点からも、経済そのも...

  • 【本の情報】 生命、エネルギー、進化 [著]ニック・レーン

    ■科学の力強さ、ストレートに ここ数年、いや10年間に読んだ中で、科学のおもしろさと力強さをもっともストレートに伝えてくれる本だ。 生命の起源とその複雑化の過程について、現在わかる範囲でのもっとも具体的かつ詳細な解明の試みである。内容と展開は上質のミステリーのようにスリリング。ただし、かなり難解。 著者は近年主流となっていた、生命を情報系とする見方に別れを告げる。生命はエネルギーをうまく制御し利用...

  • 【本の情報】 みすず書房旧社屋 [著]潮田登久子

     20年前に解体された本郷3丁目のみすず書房旧社屋を、取り壊し直前に写真家が撮影していた。親しみに満ちたモノクロ写真に社員やゆかりの人々の文章が添う。 ビルの谷間の角地に佇む、木造2階建ての、住居のような質素な建物。「屋根の一角に物干し台まで載っていた。みすず書房の知的で清楚な書籍のイメージとはかけ離れていた」と写真家の鬼海弘雄。扉を開けると狭い上がり口に書物が押し寄せ、どこもかしこも雑然と、本と...

  • 【本の情報】 幻の料亭・日本橋「百川」―黒船を饗した江戸料理 小泉武夫さん

    ■粋な華やぎ、食も遊びも 発酵学を専門に食文化を広く研究し、著書も数多い小泉さんが、落語でもおなじみの江戸の一流料亭「百川」を探究した異色の本だ。日本橋浮世小路に店を構え、多くの文人や旦那衆を迎えた数々の献立を紹介、江戸の食文化の華やぎを小説仕立てで伝える。 「落語の『百川』は子どもの頃から聴いていましたが、調べてみると、すごい料理を作っていた。魚河岸がすぐ近くで、魚は新鮮ですしね」 食べるばかり...

  • 【本の情報】 九十歳。何がめでたい [著]佐藤愛子

    ■潔いヤバン人 佐藤愛子のエッセイ集『九十歳。何がめでたい』の魅力は、このタイトルに集約されている。次のような文章を読むと、そう思う。〈ああ、長生きするということは、全く面倒くさいことだ。耳だけじゃない。眼も悪い。始終、涙が滲み出て目尻目頭のジクジクが止らない。膝からは時々力が脱けてよろめく。脳ミソも減ってきた。そのうち歯も抜けるだろう。なのに私はまだ生きている〉 病院の待合室へ行くまでもなく、日...

  • 【本の情報】 また、桜の国で [著]須賀しのぶ

    ■戦争の悲しみ、民族超えて共有 ポーランドの首都ワルシャワの郊外を歩いていると第2次大戦末期の1944年、ナチス・ドイツの占領に対して国内軍が武装蜂起した「ワルシャワ蜂起」の慰霊碑や慰霊塔をよく見かける。だがそれは、ワルシャワが体験した戦争のほんの一部にすぎない。東京とは異なり、ワルシャワでは39年の勃発から45年の終結までずっと戦争の惨劇が繰り返されたからだ。 日本でそれほど知られていないこの時...

  • 【本の情報】 日本の一文 30選 [著]中村明

     文体論を長年研究し、『日本の作家 名表現辞典』など様々な辞典を編纂した著者による名表現の案内書だ。「円い甘さ」のようにはっとするような結びつきで読者の眼をしばたたかせる川端康成、暗い部屋の中で蝋燭の焔が揺れる様子を「夜の脈搏」と表現する谷崎潤一郎、「湯桶のような煙突が、ユキユキと揺れていた」と独創的なオノマトペで新鮮な感覚を感じさせる小林多喜二。プロの作家たちによる名表現がどのように書かれている...

  • 【本の情報】 ポケットマスターピース01 カフカ [編]多和田葉子

    <h1>ポケットマスターピース01 カフカ [編]多和田葉子</h1>[文]市川真人(批評家・早稲田大学准教授)  [掲載]2016年11月27日■時間が主題の“今”の小説 光文社の古典新訳文庫が話題を呼んで、亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』が百万部を数えたり、『星の王子さま』が倉橋由美子や池澤夏樹らの訳で各社から続々刊行されたり??世界文学の隆盛から時も流れ、古典を訳し直すことも多くなった。古典も端(はな)から...

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