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2017年08月のエントリー一覧

  • 【本の情報】 書架の探偵 [著]ジーン・ウルフ

    図書館の棚に、男が一人横になっている。彼はかつて存在した作家の記憶を植えつけられたクローンである。オリジナルはミステリ作家だった。要望があれば貸し出される。 生物学的には人間だが、完全に物として扱われる。制度上、そうなっている。 彼の小説の主人公と同様に慇懃無礼(いんぎんぶれい)な口調で喋(しゃべ)る。 ある日、彼は借り出され、自分では書いた記憶のない本をめぐる謎と遺産の争奪戦に巻き込まれる。 といっ...

  • 【本の情報】 辻山良雄が薦める文庫この新刊!

     (1)『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』 pha著 幻冬舎文庫 583円 (2)『ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方』 伊藤洋志著 ちくま文庫 734円 (3)『森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて』 星野道夫著 文春文庫 1026円 ◇ 社会に出るころには、景気はすでに下り坂、現実感のない〈経済成長〉よりは、自分らしい生きかたを探してみたい……。(1)(2)...

  • 【本の情報】 現代文学を「読む・語る・動く」 東大でシンポジウム

     「文学を読む・語る・動く」と題するシンポジウムが7月、東京大で開かれた。第一線で活躍する翻訳家や作家、文学研究者が次々に登壇し、現代の文学を縦横に語った。 「読む」をテーマにパネル討論に臨んだ福嶋伸洋・共立女子大准教授はボブ・ディランさんのノーベル文学賞を引き合いに出し、歌や韻といった「読まれない」文学をもっと評価するべきだと指摘。「韻」を子供に説明するために自作した「かまどの中にはてっぱん/お...

  • 【本の情報】 大人の落語 柳家さん喬さん

    ■客と「互角」に向き合い、つむぐ機微 古典落語を紹介しながら、男女の感情の機微をつづった書だ。泥棒をも手玉に取る女性の魅力と強さ、翻弄(ほんろう)される男たちの愚かしさや切なさ。そして、許されぬ恋を貫く男女の純粋さ??。 人情噺(ばなし)の妙手。特に女性を演じるときの繊細で優しい雰囲気はこの人ならでは。本書を読むと、文体にも、それが表れている。著者が、演じる人物たちに温かく優しい気持ちを抱き、寄り添っ...

  • 【本の情報】 〈マンガ今昔物語〉第84回 夏だからペンギン!

    昔からペンギンが好きだ。都内のサンシャイン水族館やアクアパーク品川はもちろん、北海道の旭山動物園や九州の長崎ペンギン水族館にも足を運んだことがある。なんといっても「人鳥」とも呼ばれるユーモラスなシルエットがいい。ペットとして飼うのは難しそうだが、ただ見ている分には犬や猫より可愛いと思う。 ペンギンを主人公にしたマンガというと、たとえばアニメ化もされた『忍ペンまん丸』(いがらしみきお)などが有名だが...

  • 【本の情報】 〈女優・のんのコミック感想文 のんびりーでぃんぐ〉響_~小説家になる方法~ [作]柳本光晴

    ■才能とダメさ加減の釣り合いが絶妙にかわいい 誰しも“天才”に憧れを抱くことはあるのではないでしょうか。私も、今の演技天才! とか言われると嬉しいです。天才と一口に言ってもいろんな才能があると思うのですが、この作品で描かれているのは小説を書く女の子、響(ひびき)。一見大人しそうだけど、とても喧嘩(けんか)っ早い。普通じゃ考えられないほどの行動力で周囲をドン引きさせるけれど、自分の好きな作家に握手を求め...

  • 【本の情報】 私たちの闘い 自分で動く:2 70億分の1の声に耳を澄ます 七尾旅人

     世の中の混乱がますほどに、マスメディア、また、SNS、ポップミュージックの詞に至るまで、大文字の言葉が飛び交うようになった。この傾向は、政治的スタンスや社会的階層によらず、さまざまな立場の人を覆っているように見える。不安と閉塞(へいそく)感の中、知らず知らずのうちに、多くの人々が、精神的に寄りかかることのできる、強靱(きょうじん)な一言を欲しているようだ。同時代の多くの心を直情的にひきつけようと...

  • 【本の情報】 地球は本当に丸いのか?―身近に見つかる9つの証拠 [著]武田康男

    学校には丸い地球儀があり、図鑑を開けば宇宙から捉えた丸い地球の写真が載っている。私たちは肉眼で地球を外側から確認したこともないのに、自然に、そして無意識に地球は丸いものだと信じ込んでいる。そういった「信念」に囲まれて生きている。生まれたときに自分のそばにいる大人を親だと思い、食事は一日三食、人は恋愛をするものと思っている。これらも本当に正しいのかどうか確認する前に信じていることだ。 では、地球は本...

  • 【本の情報】 少年ジャンプ、半世紀 キャラ進化、人気引っ張る

     『週刊少年ジャンプ』が来年で創刊50周年。大規模な広告キャンペーンが話題を呼び、創刊号と最大部数653万部を記録した9784081022380しろ漫画は次に向かうべきだと思っていた」 漫画は紙で完結するものではない。堀江はそう考える。「手塚治虫は、絵を動かすためにアニメーションに行った。そもそも彼は映画が好きで描き始めています。漫画は漫画で終わりません」 ジャンプの部数が落ち始めた90年代半ばは、同時に、メデ...

  • 【本の情報】 バルタン星人を知っていますか? 飯島敏宏さん

    ■カオスから生まれた強さ伝える 「バルタン星人を知っていますか?」と聞かれて「知りません」と答える人は、現代日本に何人いるだろう。バルタン星人が登場した「ウルトラマン」の第2話「侵略者を撃て」が放送されたのは1966年7月。TBSの社員だった飯島さんが千束北男の名で脚本を書き、自ら監督も務めている。 「ウルトラ」シリーズは半世紀にわたって放送されているが、その間、バルタン星人は何度も地球にやって来た...

  • 【本の情報】 生涯投資家 [著]村上世彰

    ■話題になった案件と自らの哲学語る 2000年代前半、「モノ言う株主」「村上ファンド」で名を馳(は)せた村上世彰氏。06年にインサイダー取引で逮捕され、有罪判決を受けた氏が、初の自著で過去の投資案件と投資哲学について記した。 小3の時に十年分のお小遣いとして百万円を父からもらい、サッポロビールに投じたのが氏の最初の投資。東大卒後、官僚として16年務めたのち、投資家として独立した。 本書では、02年のア...

  • 【本の情報】 未来の年表-人口減少日本でこれから起きること [著]河合雅司

    ■静かなる有事 2015年の国勢調査で明らかになったように、日本の人口は減少に転じている。昨年は、年間出生数がはじめて100万人の大台を割りこんだ。このまま少子高齢化が続けば、40年後には9千万人を下回るというデータもある。すでに私たちは、世界史に類例のない急激な人口減少時代に突入したようだ。 河合雅司の『未来の年表』は、その時代の悪夢のような実態を具体的に紹介する。第1部のタイトルにもなっている...

  • 【本の情報】 土偶界へようこそ-縄文の美の宇宙 [著]譽田亜紀子

    ■造形美、かきたてる想像力 縄文のビーナスって知ってますか? 国宝土偶の第一号である。知らないという人、こっちにいらっしゃい。いや、実は私も有名な遮光器土偶ぐらいしか知らなかった。この本の受け売りでお教えすると、土偶というのは縄文時代、およそ1万5千年前から2400年前まで続いたとされる時代に作られた、人の形をした土の焼き物のこと。何のために作られたかはよく分かっていない。でも、なんらかの仕方で祈り...

  • 【本の情報】 人の数だけ物語がある。-ザ・ゴールデンヒストリー 朗読CDブック [編]文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」

     大竹まことがパーソナリティーを務めるラジオ番組内の一コーナーの書籍化だ。放送時間は約5分。男手一つで育ててくれた父の背中を見て、ピンセット工場を継いだ鈴木正弘さん。交通事故による寝たきり生活を経て、車椅子ラグビー日本代表となった岸光太郎さん。最終試験で宇宙飛行士を逃したが、別の形で夢をかなえた内山崇さん。原発事故からの避難者、沖縄戦の体験者ら16人を収録。圧縮した文章からは取材に費やした時間と労...

  • 【本の情報】 第13回大阪こども「本の帯創作コンクール」作品募集

     児童書に巻く「帯」のデザインを小学生から募集。課題図書と自由図書の部門があり、課題図書は低・中・高学年で各6冊。自由図書はコミック、辞典、事典、図鑑類を除く。課題図書の優秀作品の一部は印刷されて本に巻かれ、店頭に並ぶ。 9月4日締め切り。朝日新聞社など主催。 問い合わせは大阪読書推進会事務局(06・6361・5577、 http://www.osaka-books.ne.jp )。http://book.asahi....

  • 【本の情報】 奇怪・難解、あっと驚いてこそ

     作家の綾辻行人さんを迎えた第22回「関西スクエア 中之島どくしょ会」(朝日新聞社主催)が7月中旬、大阪市北区の中之島フェスティバルタワーであった。デビュー作『十角館の殺人』で、謎解きを重視する「新本格」ミステリーブームの先駆けとなって30年。単行本未収録の作品を集めた新刊『人間じゃない』(講談社)の執筆経緯や、これまでの作家生活などについて語った。 ■名探偵が謎解く「新本格」30年 「新本格」ミス...

  • 【本の情報】 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 [著]磯田道史

    ■死にかけて考えた軍の不合理 〈「なぜ日本陸軍は異常な組織になってしまったのか」という疑問〉が、司馬遼太郎にはあったと、磯田さんは語りはじめる。 明治は徳川を倒してできた。その倒された徳川は織豊(織田・豊臣)から権力を奪ってできた。その奪われた織豊の前には〈まだ日本全体を覆う大公儀(おおこうぎ)〉という権力体はなかった。 ならば織田信長が生まれたころから日本陸軍が異常な組織になるまでの歴史を、司馬は探...

  • 【本の情報】 弥栄の烏 阿部智里さん

    ■「八咫烏シリーズ」はある予感から 最年少の20歳で松本清張賞を受け、作家デビューした。人から鳥の姿に変身できる「八咫烏(やたがらす)」が治める異世界を描く「八咫烏シリーズ」を書き続け、6巻の『弥栄(いやさか)の烏(からす)』で第一部が完結した。累計85万部に達する大ヒットになった。5年前の自分から見て、今の自分は。「想像していた通りです」ときっぱり。 高校2年、後の5巻『玉依姫(たまよりひめ)』の...

  • 【本の情報】 人工知能、遺伝学、ネットワーク――多様性の未来を紐解く「9つの原理」とは?

     ネットワーク時代の到来によって、様々なものが急激に、絶え間なく変化し続けている。ネットワーク、人工知能、遺伝学、製造業、輸送、医療などにおけるイノベーションは日々、どこかで起こっている。 しかし、変化し続ける社会に、私たちは適応できているだろうか? ビジネスマンや経営者、技術者や研究者のみならず、普通に生活している人々にも、時代に適応する能力と物の見方や考え方は必要な時代だと言える。 そんな時代...

  • 【本の情報】 政治家の言葉:下 特別対談 保阪正康さん、斎藤美奈子さん

     前週に続いて、本紙書評委員の保阪正康さんと斎藤美奈子さんが、先人の本を手がかりに政治家について語りあいます。 ■保守は経験重視 ??失言や暴言ではなく、名言も聞きたいものです。 保阪 佐藤栄作内閣で法務大臣を務め、衆院議長にもなった前尾繁三郎(1905~81)が『政の心』(毎日新聞社、品切れ)で語っています。「保守主義は目的を達するためには手段もまた正当でなければならない」「政治的モラルを堅持しなけれ...

  • 【本の情報】 英国諜報員アシェンデン [著]サマセット・モーム [訳]金原瑞人

     ある大手書店チェーンのランキングリストを眺めていたら、サマセット・モームの『英国諜報員アシェンデン』を発見! 『月と六ペンス』などで知られる作家がこの作品を発表したのは1928年。しかも既訳がいくつもあるのに、なぜいま注目を? 理由のひとつは金原瑞人による新訳であり、新潮文庫の「Star Classics 名作新訳コレクション」の一冊だからだろう。もうひとつは「諜報員」という3文字かもしれない。「...

  • 【本の情報】 ちいさな国で [著]ガエル・ファイユ

     人は、なぜ、争うのだろう。なぜ、憎み合うのだろう。誰も幸せにならないのに。そんなことはみんなわかっているのに。 著者はフランスの詩人、ラッパー。ブルンジで生まれ育ち、フツ族とツチ族の民族抗争を逃れてパリに移住した。この物語は、著者のアイデンティティを重ねた主人公の一人称で語られる。 フランス人の父とルワンダ出身の母。めぐまれた日常。明るくやんちゃで、ちょっとほろ苦い、少年期の思い出。 だが、激動は...

  • 【本の情報】 すごい物理学講義 [著]カルロ・ロヴェッリ/ジョルジュ・ペレック―制約と実存 [著]塩塚秀一郎

    ■規則の果てに生まれる独創性 世の中には法則がある。 自然法則であれば、自分でつくることはできないから、発見するということになる。理由はわからないなりに、とにかくそうなっている現象を説明しようと試みる。 二十世紀前半の物理学できわだつのは、相対性理論と量子力学の登場である。 前者は主に重力を、後者は極微の領域を扱うが、極微の領域における重力を扱おうとすると、どちらの理論もあまりうまくいかなくなる。 それ...

  • 【本の情報】 のらもじ―まちに出よう もじを探そう [著]下浜臨太郎、西村斉輝、若岡伸也

    「のらもじ」とは何か? それは街なかにひっそりとある看板文字のこと。古くからある喫茶店や理容室などの看板に用いられた愛嬌のある文字を収集し、それをもとに五十音の「字体」を創作する。これが「のらもじ発見プロジェクト」である。 本書で私がもっとも魅かれたのは、著者がそれぞれの店の人にインタビューをしている部分だ。開店当時の思い出や店名の由来、看板の文字のデザインにどんな意図があるのか、などなど。読んで...

  • 【本の情報】 東大卒貧困ワーカー [著]中沢彰吾

     就職氷河期も今は昔。新卒採用は売り手市場で、有効求人倍率はバブル期をしのぐ。だが、本当に好況なのか。統計では見えない市場の歪みを本書は炙り出す。 著者は親の介護のためにテレビ局を辞め、多くの労働現場で非正規社員として働く。そこに横たわっていたのは正社員と非正規社員の分断だ。例えば、倉庫内の運搬作業では「使えねえなあ」と正社員は派遣社員を罵りながらも、仕事を手伝うことはない。業務改善の視点はなく、...

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