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【本の情報】 ビブリオバトルって何? 歌人・穂村弘×ビブリオバトル普及委員会代表・岡野裕行

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歌人の穂村弘さんとビブリオバトル普及委員会代表の岡野裕行さんら





岡野裕行さん





穂村弘さん





穂村弘さん





 おすすめの本を紹介し合って競う「ビブリオバトル」とはいったいどんなものなのか、読書の世界をどんなふうに変えてくれるのか、歌人の穂村弘さんとビブリオバトル普及委員会代表の岡野裕行さんに語り合ってもらった。。



●「ビブリオバトル」ってどんなもの?



――お二人は初対面ですか。



岡野 はい。穂村さんのご本はよく読ませていただいています。



穂村 何年か前から「ビブリオバトル」という言葉を耳にしてはいましたが、実際には見たことがなくて、今日はどういうものなのか教えていただけるというので、すごく楽しみです。



――では、まず、ビブリオバトルとはどういうものなのか、岡野さんからご紹介いただけませんか。



岡野 ビブリオバトルは、一言でいうと、みんなでおすすめの本を紹介し合うコミュニケーションゲームです。知的書評合戦という言い方もしています。ルールは簡単で、発表参加者が読んでおもしろいと思った本を持って集まり、順番に5分ずつ本を紹介して、1人が発表するごとに2,3分のディスカッションタイムを設けます。全員の発表が終わったところで、どの本が一番読みたくなったか、参加者全員が1人1票の投票を行い、最多票を集めたものを「チャンプ本」とします。もともとは、今は立命館大学で教えておられる谷口忠大先生が京都大学にいたとき、ゼミでおもしろい本を探そうと始めたもので、それが2007年ですから、すでに10年の歴史があります。最初はゼミだから5人程度の少人数でやっていましたが、今は、代表者がステージで発表し聴衆が投票するイベント型や、参加者を5、6人のグループに分けて同時進行でやるワークショップ型など、いろいろな形態が出てきています。



穂村 日本で始まったものだったんですね。ビブリオバトルというのは、「ばびぶべぼ」という濁音がたくさん入っていて、響きがいいですよね。思わず口にしたくなる感じで、すごくいいネーミングだと思いました。それから、僕らの世代だと、本が好きな子は、人前で話をしたり、他人と争ったりするのが苦手というイメージがあったから、読書とバトルを結びつけたところが、すごく新鮮だなと思いました。僕らがいわゆる「オタク」と言われる最初の世代だと思うけれど、下の子たちがコスプレを始めたとき、すごく衝撃を受けた。「オタク」がそんなことできるのかと。それに匹敵します。



岡野 考案者の谷口先生はロボット工学が専門で、ビブリオバトルをあくまでもゲームとしてデザインしたので、ネーミングもゲームっぽさを強調したかったと言ってました。確かに名前が怖そうという人もいますが、実際に殴り合うわけではないので安心してください(笑い)。



――今は、いろいろなところで開催されていますよね。



岡野 私が代表を務めるビブリオバトル普及委員会が2010年にできて、この年に東京都主催で「ビブリオバトル首都決戦」が始まりました。これは、全国大学ビブリオバトルとして今も続いています。2012年にはLibrary of the Year2012を受賞して、これをきっかけにビブリオバトルが全国の公共図書館や学校図書館に広がっていきました。さらに文部科学省の「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本計画」にも盛り込まれて、学校教育の現場でもビブリオバトルが取り入れられるようになったんです。日本でもいろいろなところで開かれてますが、台湾やシンガポール、韓国、アメリカなどでも行われていて、とくにソロモン諸島では、海外青年協力隊で派遣された青年が現地で始めて、大変な盛り上がりになってるそうです。



●本棚を見られるのが怖い!



穂村 自分1人ではどっちみち大した数の本は読めない。だから、書評とかが一種の代替機能になってると思うけれど、ビブリオバトルに1回参加すると、何十冊かの本について、だいたいどんな感じの本か、わかるってことなんでしょうか。



岡野 ビブリオバトルの機能としては、本の情報を共有するとか、スピーチ能力を向上させる、いい本を見つける、コミュニティーを作るなどがあげられています。読書会のゲーム化といいますか、本を通じたコミュニケーションですね。「人を通じて本を知る、本を通じて人を知る」というのがキャッチコピーで、1冊の本をどう読むか、あるいは1人の人間がどういう本に出合って、どんな影響を受けたかをシェアするというのがコンセプトになっています。でも、あくまでもゲームなので、気軽に楽しんでほしいと思います。



穂村 なるほど。本の内容だけじゃなく、こんな人がこんな本をこんなふうに読んでるというのがわかってしまうわけですね。僕は、去年、いろいろなところで公開トークや対談をさせていただいたんですが、予定が1時間の講演の50分くらいまで来たところで、突然、楳図かずおさんの漫画「わたしは真悟」について話し始めて、それが止まらなくなって、それからさらに1時間も話してしまったんです。後で後悔したんですが、話を聞いた1人がその後読んだらしくて、「すばらしい本だった。これから何か穂村さんを嫌いになるようなことがあっても、この本を教えてくれたから許します」と言われました。これって、すごくないですか。自分にとって決定的な本って、そんなに頻繁に出会えるわけじゃないから、気持ちはわからないでもないけど。



岡野 他人がどんな本読んでるのかって、気になりますよね。



穂村 そうそう、この間、電車で僕の隣に座った女子高生が文庫本を読んでいたのね。ほかの人たちはみんなスマホいじってるのに。それで、何読んでるのか知りたくて知りたくて、必死になって横目で盗み見しようとしたけどわからなかった。5千円あげるから教えてなんて言ったら、通報されるよね(笑い)。



岡野 それはダメでしょうね(笑い)。今は図書館でも、他人に読書履歴を教えてはいけないことになっています。ビブリオバトルなら、本人が公開してるんだから問題ないですが。気になる人の好きな本もわかる。



穂村 あっ、なるほど。



岡野 ビブリオバトルを通じて知り合って、結婚した人もいます。



穂村 本とか音楽とかの好みが合うって、重要なことですよね。作家の角田光代さんは、絶対許せないバンドが1つあるんですって。そう言われると恐ろしいですよね。そのバンドを好きだと言ってしまったら、角田さんとの関係が全面崩壊してしまうじゃないですか。だけど、そのバンドの名前は決して教えてくれないんです。



岡野 それは怖いですね。



穂村 本もちょっとそういうところがあって、だから僕は、お客さんが来るのはうれしいけれど、本棚を見られるのが怖いんです。脳内を見られるようで。それで、家の本棚は二重にしてあって、表側は来客用。で、裏には片岡義男の本が200冊隠してある。あっ、これ言っちゃいけなかった(笑い)。



岡野 もう言っちゃいましたよ(笑い)。



●本について語るのも読書だ



穂村 好きでも好きだといいたくない本って、あるじゃないですか。ビブリオバトルでは、心の底から好きな本を紹介するんですか。



岡野 基本は自分が読んでおもしろかった本ですが、バトルに勝ちたいと思うと、集まっている人がどんな本が好きかとか、事前にシュミレーションしたりすることもありますね。知らない人が来る大会などになると、自分の選書を信じるしかありませんが。



穂村 じゃあ、自分にとって一番おもしろい本を持ってくるというわけでもないんだ。



岡野 1回だけならそうなるかもしれませんが、2回、3回と続けて、本を通じたコミュニティーが誕生してくればいいと思っているんです。長野県の県立図書情報館は、公共図書館で最初にビブリオバトルを開催してくれたところですが、そこでは月1回、ずっと継続してくれています。



穂村 タイトルは知っているけれど読まない本ってあるじゃないですか。若いころはいつか読むだろうと思っていたのが、ある時から自分はこの本は読まずに死ぬのかな、まあ、それでもいいかなと思い出す。例えば、「資本論」とか、ビブリオバトルに持ってくる人はいますか。



岡野 持ってくる人はいるでしょうが、勝てるかなあ。



穂村 「源氏物語」なんかはどうですか。



岡野 その辺はありそうですね。



穂村 「聖書」なんかだと、どういう切り口で紹介するのか聞いてみたい気がしますね。変わり種の本を持ってくる人もいますか。



岡野 図鑑という縛りを設けてやったときに、キノコの図鑑を持ってきた人がいました。それで、ひたすらキノコについて熱く語る。おもしろかったですよ。そういうふうに、本のジャンルやテーマを決めてやったり、英語でやろうとか、泥酔バトルと称して飲み会を兼ねてやったり、今はもう何でもありって感じです。それでいいと思う。本について語るのも、広い意味で読書だと思うので。



穂村 1回優勝した本の話を何回もして、その人の持ちネタみたいになっていくなんてことはないですか。



岡野 トーナメント方式の学生大会などでは、同じ本で何回もバトルしたりしますが、決勝より準決勝の時のほうが話に勢いがあってよかったとか、言われたりすることもありますからね。作りすぎじゃないかとか。投票の基準は、発表のうまさではなく、聴衆に読みたいと思わせるかどうかなので、そんなに上手にやろうと思わなくていいんです。



●世界は1つじゃないと思わせてくれ!



穂村 これいいよと言われても、なんか気が進まない本もありますからね。逆に、意図的に相手を説得しようという気がなくても、小耳にはさんだエピソードで、強烈にその本が読みたくなってしまうということもあります。



岡野 例えば、どんな本ですか。



穂村 小説家の中井英夫さんは、ある文学賞の選考委員をしていたとき、応募作の中にタイムスリップの話があったんだそうです。主人公は何度も何度も同じ時間を繰り返して、なかなかその時間の渦から脱出できない。中井さんは、それを読んだ時、ある不満をもったそうなんです。それは、小説の中の時間は何度も戻るのに、作者が原稿用紙の右端に打ったページの番号は戻らない。手書きの時代で応募原稿だから、作者は1、2、3と番号を振っていたんでしょうね。つまり、そこだけが現実で、作者は、自分はお話を書いていると思ってたってことがわかってしまう。中井さんは、作者の本気度というか、作中世界をどれだけ生きてるかということをものすごく重視する人だから、そこが不満なんですね。僕は、その話を聞いた時、そんな本があったら読みたいと強烈に思いました。まあ、実際にあったら誤植と間違えられそうだけど。



岡野 穂村さんご自身が、そういう本をつくってはどうですか。



穂村 それで、「鳥肌が」(PHP研究所)という本を出したんです。タイトルからもわかるとおり、恐怖がテーマの本ですが、祖父江慎さんというブックデザイナーにお願いして、真っ

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